だから大丈夫だよ、と笑ってみせると、名良橋君に腰を引き寄せられた。

0の距離で感じる体温に、心臓がいつもより足早に脈を打つ。



「ありがとな、早坂」



名良橋君の掠れた声に呼ばれ、私の体が僅かに震えた。

ありがとう、なんて、どっちが。

怪我で辞めた、なんて、私はまた嘘を重ねたのに。



「ねぇ、名良橋君」

「……ん」

「車椅子なら、外出られるかな?」



予想外の質問だったようで、名良橋君は私の腕の中で顔を上げた。

そしてまた、私も名良橋君を見据える。



「なんか、手術したときにボルト入れたらしいから多分大丈夫だけど。いきなりどうした?」

「明明後日の約束はまだ死んでないでしょ?だったら、海行こうよ。砂浜なら、由羽ちゃんがどこにいても見渡せると思うし」