先生は一礼して去っていった。

先生の言葉にホッとして、すぐにハッとする。



複雑骨折って……じゃあ、大会は……。



安心や不安で視界が滲んだとき、扉の向こうからストレッチャーが運ばれてきた。

そこには、目を閉じたままの名良橋君の姿。



「名良橋!」

「名良橋君!」



慌てて駆け寄るも、名良橋君の返答はない。

顔には痛々しい無数の傷があった。

そっと手を握ると、そこから名良橋君の体温が伝わってくる。



「名良橋く……っ」

「病室に入られますが、よかったら傍にいてあげてください」



看護師さんにそう言われ、私は力なく頷いた。

ストレッチャーは病室のある方へと運ばれていき、その場に残された私達は深い溜め息を吐く。