ぽつりと、高野君が言葉を吐いた。

由羽ちゃんの小さい体が更に小さくなった気がして、そっと抱き締める。



「……居眠りとか、そんなんじゃなくてさ。横から来たトラックに名良橋、気付かなかったみたいで」



なんで、こうなっちゃうの……?

出来の悪いラブストーリーじゃないんだからさ、ほんとやめてよ。

名良橋君を、奪わないでよ……。



そのとき、ふっと赤いランプが消えた。

閉ざされていた扉が開き、中から先生らしき人物が出てくる。



「終わった……か?」

「先生、名良橋は……」



ドラマで一度は見たことのあるシーンのように、先生はマスクと帽子をとり難しい面持ちで口を開く。



「事故の割に、大事には至らなかったようです。左足の複雑骨折、命に別状はありません。これから暫くはリハビリに励んでいただくことになります」