16歳の天使~最後の瞬間まで、キミと~

“由貴だけは私にくれたっていいじゃない”。

きっと梨央さんは、そう言おうとした。



「……由貴は絶対、渡さない」



梨央さんは黙ったままの私にそう言って、その場から立ち去った。



私には私の、名良橋君には名良橋君の過去があり、当たり前に私達はそれを知らない。

そんなこと、わかってた。

わかってた、つもりだった。

だけどいきなり知らない一面を突き付けられ、自覚したばかりの想いを殺せと言われ。

私の頭の中はこんがらがって、もう何もわからなくなった。





それから一週間後、私は漸く学校に復帰することが出来た。

教室に入るなり、瀬川さんと高鴫さんが駆け寄ってくる。



「早坂さん!もう大丈夫なの!?」

「うん、ただの貧血だから。心配かけてごめんね」