ぼくの下手っぴなデッサンをきっかけに、仲井さんと会話が増えた。


それまで衝突事故に関する事務的な会話ばかりだったけど、ぼくは彼女とイラスト関連の雑誌を読んでふたりで勉強し、彼女はぼくに借りた映画雑誌を開いて、これは見た。面白かったと感想を述べるまでの仲になった。


大体一緒に過ごす時間は放課後。

教室に居残れば柳と宮本を筆頭に“ナカナカ”に対して野次馬が茶々を入れ仲井さんの機嫌を損ねるから、いつでも侵入できる視聴覚で過ごしている。


邪魔されたくない気持ちもあったんだ。


仲井さんと過ごす時間は有意義で、すごく楽しい。


彼女とイラストの雑誌を読む。

彼女からイラストの話を聞く。

ぼくの自作キャラを描いて仲井さんに見せて笑わせる。


映画の話で盛り上がったり、スマホで話題の映画を検索したり、それらすら放棄してふたりで漫画を読んだり。


時々見回りにくる鬼の学年主任に見つからないよう隠れるんだけど、それがドキドキもんで、毎度ちょっとしたホラーを体験している。


斎藤が通り過ぎたのを見計らうと、ぼくたちはいつも顔を見合わせて笑った。