仲井さんに惚れた理由、理由、理由。

ぼくの性格を熟知している二人に、下手な嘘は言えない。すぐにばれてしまう。


大体仲井さんといえばなんだ? イラスト?

惚れた理由にならないよな。

性格はぼく好みじゃない、どっちかと言えば馬が合わない。


仕草に惚れた、とかが良いよな。

彼女の表情とか。

仲井さんの笑顔……は、見たことがない。

拗ねた顔は何度か見たことがあるけど。


そうだ、拗ねた顔を見る度にいつも思うんだよ。


「なんというか、ヒヨコっぽい」


「は?」「ヒヨコ?」柳と宮本が間の抜けた声を上げる。


「仲井さん、拗ねるとヒヨコみたいに唇を尖らせるんだよ。だからヒヨコっぽいなーって」

「……それが惚れた理由か?」


どこか呆れたような顔で宮本が肩を竦めた。


しまった。

惚れた理由を言うつもりが下手こいた。


「か、可愛いじゃんヒヨコ。仲井さん、なんか、ぴよぴよしている感じがするんだよ。それが癒される。そう仲井さんは癒し系ヒヨコ女子だと……うそうそうそ、真面目に考えるって!」

「ひどいよ! 誰の拗ねた顔がヒヨコなの!」


ぶすくれた顔で迫って来る仲井さんから、大慌てで逃げる。

「その顔がヒヨコなんだって!」

怒っている顔を指摘すると、「誰がその顔にさせているの!」と、彼女が借りた本を構えて追い駆けてきた。