気付いてしまったのだ。 馬鹿正直にいることの生き辛さに。 本音を隠して生きることの、なんと窮屈なことか。 漏れる溜め息は、止むことを知らない――… 「楓?」 落とされた名前で我に返った。 「ごめん、」 慌てて謝ると、渚は少し寂しそうに笑った。 ズキン、胸が痛む。 彼もまた、気付いているのだ。 私が別の誰かを想っていることに。