そよそよと、爽やかな風が頬を撫でる。

広い大学内にある、中庭のこのベンチが彼女のお気に入りである。


「楓!楓ってば!」


耳に飛び込んできた大きな声にハッと我に返り、頬杖をつくのをやめて見上げる。


「ボーッとしちゃって。何か考え事?」

そう言うと、柔らかいウェーブがかった長い髪の女の子は楓の隣に座った。

「晴香…」

「また彼のこと考えてたの?」

そう聞かれると、楓はばつの悪そうな顔をした。


…晴香には何でもお見通しだ。


「あっ、ほらほら!噂をすれば何とやら♪」


そう言って手を振る。

眩しくて見えない。