美津と義孝の父親は、取引先の重役だった。 だが、正義感の強い彼らは、金にがめつい杏奈の父親とは今後取引をしないと申し出た。 杏奈の父親の会社に、金の横領が噂された頃だった。 その噂ですら金で解決した父親だったが、馴染みの取引先を2件も失うのは痛い。 そして何より屈辱だった。 金で何でも解決してきた彼が、初めて金ではどうにもならない人間と衝突したのだ。 悔しかった。 握り締めた拳が震える程に。