「ねぇ、沙良‥ 今日、一喜君が出所したわ。 あなたはあんなことをした一喜君を、それでも許すの?」 沙良の母親は、哀しい瞳をして呟いた。 「あなたは強くて優しいものね。…だけど、人一倍弱くもあるでしょう? 憂君が居た頃は、とても強かったけど‥」 ポツリ、涙が零れた。 「憂君さえ生きてくれていたら‥ 嗚呼、一体誰が‥何が一番悪いのかしら‥」 両手で顔を覆い、沙良の母親は泣き崩れてしまった。 病院の、片隅で。