ピンポーン‥


インターホンを鳴らす。

僕は笑顔を張り付ける。

しかし、応答が無い。


「沙良はもうその家には居ねぇよ。」


右手をポケットに突っ込み、左手で煙草を更かしながら佐古は言った。


「沙良はどこへ行った。」

低い声で一喜が問う。


「お前が出所する前日に、跡形も無く消えたよ。…まるでお前という悪魔から逃げるようにな。」


クックックッ、乾いた笑い声が響く。


「僕から逃げられると思うなよ?…地獄の果てまで追い掛けてやるよ。」

アハハハハハハハ!
狂ったように笑う一喜を、佐古はおぞましい物でも見るかのように眉をひそめた。