小5のあたしには分からなかったんだ。


いや、分かるハズがないんだ。



……それが浮気の証拠だってことを……。



その頃のあたしはなにも知らなかったから、においのことが気になりつつも、父親に対する態度はなにも変わらなかった。



平凡な、でも幸せな生活を送っていたある日。



『ご飯食べるわよー!』


夜、お母さんのいつもの呼び声を聞いて、あたし達は慌ててリビングへ下りた。



『お父さん、まだ帰ってきてないよ!?』

『先に食べちゃうの!?』


いつも、夜ご飯は一緒に食べていたから。