今考えたらホント有り得ないけど、あたしはお父さんっ子だったから、ギューって抱きついてたんだ。 その瞬間に、気づいた違和感。 『お父さん、甘いにおいがする~』 『あっホントだ!いいにおい!』 あたしが言った言葉に千尋も便乗してきたけど、あたしにとっては“いいにおい”なんかじゃなかった。 なんか……違う。 家の洗剤のにおい、お母さんの香水のにおい、汗のにおい……。 どれでもなかった。 ……じゃあ、この甘ったるいにおいは、なに……?