ニヤリと妖しい笑みを浮かべる奥原朔。
……なにがなんだか、分かんないけど。
手首を掴まれて、至近距離に顔があら、逃げられない状況。
ここは従っておくか……。
「はい、分かりましたっ」
あたしはそれだけ言うと、急いでお店へ戻った。
「遅い」
それから約10分後、奥原朔が発した言葉。
再びマスクとサングラスをしているから表情は分からないけど、眉間にシワが寄っている。
「お、遅いってねー!着替えとか、いろいろあるんだから!」
10分で頑張ったのに『遅い』はないよ。
「はいはい。……で、どこ行きたい?」
……え?



