人がどんだけモヤモヤしとるかなーんも知らんと。
おれからは逃げて、ほかのヤツには笑いかけて。なんなん。歯ぁ見せるなアホ。ブスッとしとけやおれの前やったらずっと口とがらせてタコかひょっとこかわからんみたいな顔しとるくせに…!!
こふじに向かって、一直線に歩く。
スッタスッタ。このときばかりは、スリッパも潔い音を立てる。
「オイ」
「え……」
低い声で呼びかけたら、こふじが振り返って。
そんで、「ヒッ」って、昨晩ドアの向こうで聞いたのと、おんなじ声出した。
まわれ、右。こふじに似合わず、すばやい動きでクルッと回って逃げようとしたから。
ガシッ!と、両手で頭をつかむ。ロックオンや。
「あ………えっと…」
「昨日は素晴らしい歓迎、どうもありがとうな」
ニッコリ笑って言ったら、こふじがまた「ヒッ」言うた。三回目や。



