『きれいにハゲますように』
…ケンカのたびにずっと言うてくるけどな。ちゃんと髪あるっちゅーねん。
今日行っても、昨日のかんじやろか。
これからずーっと怒っとくつもりなんか、アイツ。
ほんで、ふっと顔あげて、気づいた。
廊下の、おれがおるとこよりちょっと先。
こふじっぽい、おかっぱの長さの黒々した髪が見えてんか。
「……あ」
実際声に出とったけど。あっ、て思た、その瞬間。
目先で起こったことに、白目になりかけた。
「藤田さん、髪ハネとるよ」
いきなり、ヒョコって。
こふじのとなりに、メガネの男が現れてん。背たけスラッとしたヤツ。ほんで。
「……っ!?」
手ぇ伸ばして、こふじの髪にさわった。
さわりよってん。
おれが今まで一回も撫でたことない(なぐったことはあるけど)、こふじの頭を。



