その陰に隠れてそっと見てみたら、セッチがこっち振り返っとって、あわてて下向いた。
どんな顔したらええか、全くわからへん。
だって今の自分の心境、笑顔でも怒り顔でも、泣き顔でもないねんもん。
「ここベストポジションちゃうー?けど日焼けするかなー?」
「カオちん、焼けたら赤なるもんなぁ」
「こふじはすぐ黒なるよな」
「気にしとるねんやめて」
一声かけて満足したらしいカオちんと一緒に、空いとる席見つけて座る。
観客としてもはじめての、陸上競技場。
見下ろしてみれば、今はちょうど、短距離走の試合が行われとるみたいや。
ウチと同じ人間とは思われへん身体能力を発揮しとる選手が、何人も。
白線のカーブんとこで、追い越せ追い抜けの勝負を繰り広げとる。
その光景にひとたびは眠気も飛んで、「ほぉ〜」言うて関心しとるうちに、な。
高跳びの、試合の時間がやってきた。



