「…映画、行かへん?」

「………」

「…あ!お、お母さんがっ!!雑誌の懸賞で、当ててたらしくて、そんでっ!セッチ、昨日、看病してくれたから…やからお礼に!!行ってこいって」



呆然として、ポカーンて口あけて、棒立ちや。



…だって、まさか。


こふじの方から誘ってくるとか、地球が五千万回以上まわってもない、て。思てたし。



黙ったまま突っ立っとるおれに、あわてたかんじで、こふじが後付けで言うてくる。



「あーハイハイっ、行きたないんやったらまーったくええねん、ウチかてべつにわざわざ…」

「い、行く…!!」



こふじが制服のポケットに、チケットしまおうとするから。


すごい勢いで、必死で取り上げたわ、おれ。そしたらな。



「…ははっ!……うん」





ひさしぶりに、こふじが笑った。