「………」

「ああああのあの、ちょっとそこをどけて……」

「……ゔ~……」



お、怒ってらっしゃる……! あのワンコ様怒ってらっしゃる……!

スポーツドリンクがたっぷり入ったジャグを両手で持ったあたしの数メートル先には、どこからまぎれ込んだのか白くて少し大きめな犬。

……あたし、犬は苦手なんだよぉ……。



「ワンッ!」

「!!!」



明らかに自分に向かって吠えられて、びくりと身体がこわばる。

や、やめて吠えないでー! ていうか、そこをどいてくれないとあたしみんなのいるところに行けない……!



「……あ、」



ふと、どこかから聞こえてきた呟きに、身体は固まったまま視線を動かすと。

白い犬の向こう側で、少し驚いたような顔をした辻くんが立っていた。

た、助かった……!



「(助けて辻くーん! じゃないと、みんなに追加のドリンクを運べませーん!)」



声には出さないまま、あたしは視線と口パクだけで必死に訴える。

……だけど、辻くんは。