あたしが隼人のマンションに背を向け、どこへともなく歩を進めようとした時だった。
「まだこんなところにいたのかよ」
何だか聞きたくない声が聞こえた。
そっとしてほしいのに。
本当に淳ちゃんのタイミングの悪さは、神がかったものがあると確信する。
「なに?
学校戻るんだけど」
いやいや振り向くと、やっぱりあたしの繊細な気持ちなんて知らない淳ちゃんが、歯を見せて笑っていた。
「最近つれねぇな。
男が出来たら俺なんてどうでもいいのかよ」
……やっと兄離れ出来ただけだよ。
「俺も最近寂しいんだぜ?」
だからって、あたしに何をしろと?
「そんな顔で俺を見るな。
悪いけど、今日は久しぶりに連行させてもらうぜ」
「なっ……」