「では…お騒がせ
いたしました…。」
彼女は、回収した履歴書を
鞄におさめ、丁寧に一礼し
退室した。
残された俺は
当然、奇異な眼差しを
食らうことになるーーー
「…専務…それ…」
人事部長のどうするのかと
いった声色ーーー
「うん…。覚えがある…」
ーーー覚えなんて
ないくせに…
「彼女、律儀だったから…」
ーーー今頃、きっと
鼻で嘲笑ってるだろう…
『あなたが、守りたいものは
「家庭だけ」の癖に…
相変わらず…嘘つきね』
…いつかの 受話器越しの声が
脳内に響いた気がして
思わず片耳を覆った。



