「確かにお金には困っていなかったけど、まぁ自分の力で生きていく術を身につけないといけないと思ったから…かな」

誤魔化されたようなその返答にリーシャはライルにとってこの話題はあまり聞いてほしくないことの一つだと判断した。

お互いに微妙な表情の変化を見極めて探り合っている。



「もちろん好きでやっているというのもあるけどね」

「好きなんですか?」

ライルから放たれた言葉にリーシャは面食らう。



「最初は俺も失敗続きだったけど、それなりに形になって腕もついて。振舞った料理をおいしいと言ってくれると“また作ろう”と思うんだ。大したものは作れないけどね」

「ううん、ライルの作った料理は全部おいしい。私にとっては全部大したものです」

「ありがとう」

一生懸命というにふさわしく真摯な表情で言葉を紡ぎだすリーシャにライルは嬉しい賛辞を素直に受け止めた。



「リーシャはなんだかんだ全部食べてくれるし、俺も作りがいがあるよ。まぁあとはもう少し野菜も好きになってもらえたらもっと嬉しいかな」

「野菜はまだ好きにはなれないけど、最初のころよりは好きになった…ですよ?」

ここまでは調子が良かったのに、語尾は自信なさそうに疑問で終わるリーシャ。

ライルはここで笑ってはリーシャの自尊心を傷つけるかもしれないと思った。

思ったが、面白すぎた。