出来ないのではなく、知らないことが多かったリーシャはライルが教えることを従順に受け止め、掃除のコツを習得していった。
しかし、料理だけは未だリーシャの苦手分野で、ライルに頼りきり。
料理ばかりは一週間で習得できるものではなく、危なっかしい手つきで手伝おうとしたリーシャをライルが止めたのだ。
朝と夜は毎日ライルの作るご飯を食べ、お昼もライルの作ったお弁当を持って王宮に行っている。
この日もリーシャが朝ごはんを食べていると、目の前にお弁当が置かれた。
お弁当はまだ蓋をしておらず、リーシャは食い入るように中身を見る。
毎朝お弁当の中身をリーシャに見せることは二人の習慣になっている。
なんでも、作って食べ残されては悲しいので先にリーシャに見せておくのだそうだ。
「ありがとうございます」
お弁当の中身には昨日の残りもので作ったおかずがぎっしりと詰め込まれていた。
中にはリーシャの苦手とする野菜も入っている。
初めは苦手な野菜をどうやって克服しようかと思いやられたが、ライルは料理に色々な工夫をしているため、リーシャが食べられない思った料理は一度もなかった。
だから毎朝確認する必要はないのだが、リーシャもまたライルの作った料理を見るのが好きなため、余計なことは言わないことにした。
「ライルは何でこんなに料理が得意なんですか?商人ってお金持ちだから使用人を雇ってやってもらってるものだと思ってたんだけど」
リーシャはお弁当の蓋を閉めながらライルに前々から抱いていた疑問をぶつける。
朝ごはんを食べ終わったリーシャのお皿を片付けながらライルは「うーん」と生返事をする。