しかし、オリバーに関しては例外なのかもしれない。

まず一つに世話役だということ。

そして、もう一つ。オリバーは元帥として軍をまとめ上げるだけの信頼と実績がある人物だからだ。

オリバーは机上の指導者ではなく、自らが先導して指揮を執るタイプであり、身を以て先導してくれるリーダーを皆は信頼している。

特に戦地に赴く兵士たちからは絶大な信頼をよせられているため、ロードメロイはオリバーを元帥の座から降ろすことができないでいる。

要はオリバーを処分していざという時に帝国軍の統率が執れないようでは結局のところロードメロイにとって分が悪いということだ。




「そうですね、陛下を止めることができるのはオリバーさんだけです」

「この身があるうちは陛下にまっとうな道を歩んでもらうために尽くすつもりじゃがな。陛下は毎年若い魔導師を召し抱えておられる様子であるし、年々力を蓄えつつあるようじゃしなぁ。わしの力が及ばんようになるのも時間の問題じゃ」

オリバーの哀愁を帯びた表情は寂しさも入り混じっていたようにも見えた。




「そういえば“例のもの”の捜索にイレーネが向かったらしいの」

「イレーネ様が!?」

「近々陛下が現地へ視察に行くといっておったことを推察するに、今回は期待が大きいんじゃろう」

例のものというのはつまり消魔石のことであり、国境付近の不可解な事件の要因とも予想された石だ。