ライルを見送った後、リーシャは時計を見て驚く。

時刻は10時を示しており、リーシャは慌てて髪と瞳をもとの黒に戻し、飾り気のない黒い衣装を纏う。

フードつきのローブを羽織りながら外に出て、誰もいないことを確認してから外壁に立てかけられていた庭箒に足を揃えて座ると、ふわりと浮き地面を離れる。



魔女は自分自身を浮かせることはできないため、空を移動するときは何かしらに浮遊魔法をかけて移動する。

そのため、対象が箒である必要はなく、絨毯などでも良いのだが、リーシャは昔から箒を愛用していた。

リーシャが向かう先もライルと同じ首都モリアであったため、回り道をするしかないと早々に諦めて東へ向かった。

リーシャの家からモリアまでは距離にして数キロだが、行く手を深い森が阻む。

魔女であるリーシャにとってはこの深い森は家を隠してくれる絶好の場所だが、ふとライルは大丈夫かと不安に駆られる。

気になったらいてもたってもいられないリーシャは箒の頭を北に向けて方向転換した。

最悪見つかったとしても、フードをかぶっていれば魔女が飛んでいるくらいにしか思われないかもしれないと思ってのことだった。




暫く飛んでいくと、森の中を歩くライルの後姿を見つけた。