鐘つき聖堂の魔女



「ライル…さっきはごめんなさい。先に帰っちゃったりして」

リーシャは勢いよく下げた頭をゆっくりあげ、ライルの様子を窺った。


「びっくりしたでしょう?私、魔女だったの」

「あぁ」

ライルはただ静かにそう答えた。リーシャにはそれがライルの答えだと思った。



「分かってるから」

「分かってるって何が?」

やけに落ち着いたライルの声に緊張は極限に達する。リーシャは勇気を振り絞って口を開いた。



「ライルは優しいから私が魔女だと知ったからってすぐには突き放さないと思ってる。こうして探してくれたくらいだし…。けど、魔女だと知られたからにはもう一緒にいられない」

察しの良いライルなら分かってくれるはずだ。正体を知られた魔女の末路は酷い。あっという間に噂は広まり、皆から後ろ指をさされ、街を追い出される。そんな魔女と一緒にいることで自らに降りかかる災難がどれほどかなど考えるに容易い。


「すぐに出て行ってなんて言わない。私は暫く宮殿の使用人部屋に住まわせてもらうから、家を出る準備ができたら宮殿に手紙を頂戴。見計らって帰るから。あ、私が買った服も持って行っていいからね。どうせ私には大きすぎるんだから」

わざと明るく振る舞うリーシャは自分でも分かるくらい笑顔が引きつっていた。


「他にも要る物があったら持って行って。遠慮しないでね。これは迷惑料みたいなものだから。突然家を追い出しちゃうんだから当然よ」

冷静に説明を、という当初の目標は叶わなかった。いざ口を開くと次から次へと伝えたい言葉とは別の言葉が出てきて、喋れば喋るほど惨めな気持ちになった。