対する男たちは隠しもせず驚嘆し、条件反射のように自分の尻ポケットに手をやった。

馬鹿丸出しの手下の行動にロネガンは溜息を吐く。



「そこにはもうない。先ほど俺がお前たちのポケットから拝借させてもらったからな」

ライルが冷たく放った言葉に、男たちは声には出さなかったが顔に「いつの間に盗ったのか」と書かれていた。

しかし、老夫婦の木札など最初からなかったと豪語した男たちがそれ以上ライルの持つ木札について何も言えるはずがなかった。



「ジャン、こんな奴らに構っている時間が惜しい。早く帰りなさい」

ジャンはライルを見上げると、黙って頷き、友人たちとともに家路についた。

ライルはジャンの後姿が見えなくなって暫くした後、自らもリーシャを追うために広場を後にしようとした。


「おい、待てよ」

ロネガンがライルを引き留め、馴れ馴れしく肩を抱く。

そして、ニヤニヤと虫唾が走るような笑みを湛えながらライルに耳打ちをする。




「お前もあいつに騙されたくちか?」

あいつとは誰を指しているのかは明白だった。耳障りな言葉だったが、聞き捨てならず、ライルは不愉快ながら足を止めた。

お!やっぱりな、などと勝手に共感を覚えたロネガンはライルの肩を抱いたままぺらぺらと話し始める。




「最初はあの容姿に目を引かれるよな。ちょっと優しくすればニコニコと笑顔で寄ってきて。俺も騙されたぜ」

否応がなしに耳に入るリーシャへの侮辱にライルは例えようがないほどの憤りを抱く。