鐘つき聖堂の魔女



「魔女のくせに身の程をわきまえてもらいたいね。俺は親切で助言してやってるんだ」

「それはどうもありがとうございます。けれど自分の身の振りは自分で決めます。私はもう逃げ回る生活は嫌なんです」

三年前にはなかったリーシャの強さを垣間見、ロネガンは飼い犬に手を噛まれたような気になった。

ノクターンにいた頃は従順だったリーシャが向ける、対抗的な視線に苛立ってしょうがなかった。

観衆が見ている手前、このままリーシャに言われっぱなしでは面子がつぶれると考えたロネガンは下手に出ることにした。




「まぁそういわず、魔女だとばれたら何かと不便だろって言いたかったんだ」

締まりの悪い笑みを浮かべながらリーシャの肩を抱くロネガン。

嫌悪に歪むリーシャの表情など気づく様子もないロネガンは良い案が浮かんだとばかりに続ける。



「俺のところへ戻ってくるか?その容姿さえどうにかなりゃどこか別の街に新しい家を与えてやってもいい」

「この容姿さえどうにかすれば…ですか」

ロネガンにしてみれば観衆の前で自分の財力と寛大さを誇示したかったのだろうが、リーシャには全く響かなかった。

そればかりか、先ほどまで不安や恐れにざわついていた心が風ひとつない湖面のように恐ろしく静かになった。

静まった心の奥底にあるのはじりっと燃えるような小さな怒り。




「容姿を変えて、名前を変えていれば満足ですか?容姿さえあなたの条件に見合っていれば中身は要らないと?それではただの愛玩人形じゃないですか」

リーシャはそこまで口にし、思い出したように自嘲的な笑みを零す。