「やっぱりお前“魔女”のリーシャだったんだな。また人間に化けていたとは肝が太い」
ロネガンは消魔石を持っているからか、随分余裕があるようで、魔女を前にしてもひるむことはない。
「三年前も髪と瞳の色を変えていたが、骨格まではいじれないんだろ。名前も変えていないようだし、以前のお前を知る者なら一目で分かるぜ。ノクターンが離れているからといって安心したか?」
変装魔法を使えば、髪や瞳の色はもちろん骨格も変えることができるが、そこまで変えてしまうと自分を失う気がしてリーシャはどうしてもできなかった。名前も然りだ。
「金色の髪と琥珀色のお前は綺麗だった。魔女でさえなかったら、俺がもらってやったのに」
三年前、リーシャとロネガンは付き合っていた。
宮殿を出て以来、魔女だとばれるたびに住む場所を転々としてきたリーシャは、三年前にノクターンというドルネイ東部の街に引っ越した。
その時、親切にしてくれたのがロネガンだった。
ロネガンはいくつかの商家を抱える貴族で、ノクターンでは裕福な家の者だった。
いつも取り巻きを連れて街中におり、ロネガンがリーシャに声をかけたことであっという間にノクターンの人々と交流を持つことが出来た。
しかし、今となってはあの取り巻きたちはロネガン自身の魅力に集まった者たちではなく、ロネガンの家の権力に群がった人たちの集まりだったのだと分かる。
「お互い早く気づいてよかったですね。私もあなたが見せかけだけの似非紳士だと分かっていたら最初から近づかなかったのに」
「言ってくれるじゃないか。その俺に騙されたのはお前だろ」
「そうですね。少し優しくされたからといって勘違いした私が悪かったんです」
ロネガンの挑発を受け流し、過去の自分を悲観する。

