人間から恐れられ、阻害されるうちに、彼女は人間を深く憎むようになる。

そして、魔法をもって人間に報復し始めた。それからのことは想像に難くないだろう。

魔法という不思議な力の前にはなす術もなく、人間が彼女にひれ伏したのはわずか一週間足らずのことだった。

元々純粋な悪ではなかった彼女は降伏した人間を滅ぼすことはなかった。

しかし、手のひらを返したように媚びへつらう人間たちに失望し、森の奥深くでひっそりと暮らした。

それからというもの、人間と魔女が対立するたびに彼女は人間たちの前に現れた。



ライルが何代目か分からない古の魔女に呪いを受けたのも人間と魔女が対立していた頃だった。

古の魔女の魔法は強力で、あらゆる処置を施したが、呪いは消えなかった。

魔術師曰く、古の魔女から受けた呪いは古の魔女にしか解けない。

それを知ったライルはすぐに旅に出た。

その身に古の魔女の呪いを抱え、残り僅かとも知れない命を削りながら―――



その時、全ての地位を捨て、国を出ようとしたライルの後をついてきたのがノーランドとドナだ。

ノーランドとドナもまた、築き上げてきた地位を捨て、国を出た。

ライルは二人が忠義を尽くし旅についてきてくれたことが嬉しくもあり、申し訳ない気持ちもあった。




「とにかく、俺がお前たちを責めることはない」

それはとても拙い言葉だった。