「そうだ!」

「な、なに!?」

胸の痛みを感じながら煮詰まる鍋を一点に見つめていたリーシャは肩を揺らして驚いた。



「今度お休みが合えば一緒にオルナティブに行ってみませんか?」

我ながら名案とばかりにそう提案したメリアーデにリーシャは面食らう。

ライルが働いている姿を見たい気もするが、女性に囲まれているライルを見るのは嫌だ。

メリアーデはあからさまに顔に出して葛藤するリーシャを見て、溜息を吐いた。




「迷ってるなら行きましょう?うかうかしていると他の人にライルさんを奪われちゃいますよ」

意表を突かれたような指摘にリーシャは今度こそ動揺を隠せなかった。



「別に私は……ライルは誰のものでもないし…」

「甘い!」

しどろもどろのリーシャにすかさずメリアーデの喝が入る。



「女という生き物は愛する男を所有したがるんです。今は“みんな”のライルさんかもしれませんが、いずれその均衡を破りたくなる女性が出てきますよ!」

「そ、そんなものなの?」

「そんなものです。だって誰もが愛する人の一番になりたいと思うものでしょう?」

諭すように告げられたその言葉がリーシャの胸にストンと落ちた。

そして同時に、無意識に焦燥感の原因を追うのを避けていた理由が分かった。




「そっか。普通はそうだよね」

「はい。こちらも行動あるのみですよ!だから絶対に行きましょうね、オルナティブ」

自分のことのように張り切るメリアーデにリーシャは小さく笑い、申し出を受けた。