「こ、こんにちは」

見られていなかっただろうかと肝を冷やしながらおじさんに声をかける。



「おにーさん大丈夫かい?」

「えぇ、大丈夫。お祭りにかこつけてお酒をかき込んじゃったみたい。お酒弱いくせに困っちゃうわ」

「そうかいそうかい。まぁ今日は年に一度の祭りだ。許してやってくれや」

陽気なおじさんの様子から、ばれてはいないと安堵し、ほっと息をついた。



「にしてもお嬢ちゃん力持ちだな。そんな細腕で大男抱えれるとは…」

「そんな!私がそんなに力があると思います?この人酔っ払いだけど意識はちゃんとあるんですよ。意外と足下もしっかりしてるんです」

確かにリーシャの様な小柄な女が大の男を抱えて歩くのは無理がある。

焦ったリーシャは心の中で謝りながら、男の横腹を小突いて呻き声を引き出す。

無理があるだろうとは思いながら「ほ、ほらね?」と押し切る。



「立ってくれさえすえば私でも何とか引きずって帰れるんでご心配は無用ですよ」

やや引きつり気味の笑顔でそう言うと、おじさんは目をパチパチと瞬かせた後、豪快に笑った。


「それは良かった。俺はてっきりお嬢ちゃんが魔なる力の申し子かと思った。酔っ払いの戯れと思って許してくれ」

「そんな…」

おじさんの言葉にドクンと心臓が嫌な音を立て、返す言葉に詰まる。

しかし、おじさんは動揺したリーシャに気づくことなく陽気に続けた。