巡る。甦る。 あの日の、出来事が。───鮮明、に。 「……その反応……違うんだな?」 「───っ」 「なあ、頼むから……アイツとどういう 関係なのか、教えろよ」 向坂くんの琥珀色の瞳が、苦しそうに、 揺れた。 そして向坂くんが私との距離を縮めたそ の瞬間、ふわりと香る、あの忌々しい、 匂い。 「……っ」 私はそれに耐えられなくて、その場から 逃げ出した。 大嫌いだ。 私から全てを奪った煙草(それ)が、大嫌 い。