それからしばらくして、晩餐会から帰ってきたリリアス……いや、アルディスは、バルコニーから外の景色を見ていた。


(……疲れた)


今日は一日で十日分くらいの事を体験した気がする。


あのあと、十分に手当てを受けた彼女はシラヌス少佐と言う人物から、今日あった事の原因と謝罪を受けた。


彼によると、この近くの射撃訓練場に保存されていた戦場用の爆弾を、侵入した市民らによって打ち込まれた事が原因だということだ。


結局異変に気付いた軍人によって市民たちはあっけなく確保されたらしい。


それを聞きながら、彼女は改めて今が戦争中だと言うことと、市民の不満が高まっている事を実感したのだった。


(そう言えば、今日助けてくれたイグナスとカルロって騎士の人たち……)


アルディスは、さっきの2人の騎士を思い出した。


(にぎやかな人達だったな……)


騎士や軍人という人種は、貴族にへこへこして機嫌をとるかレオドルの様な人かのどちらかだと思っていた人かと思っていたアルディスには驚きだった。


(あの人達も、騎士なのか……)


今まであまりしていなかったが、意識してみると、確かに騎士の発する独特の緊張感が固まっているエリアがある。


おそらく、それらは彼ら専用の演習場や学校なのだろう。


さらに深く神経を集中すると、はるか遠くから戦場と思われる場所の存在も感じた。


生と死の境目、人間のギリギリの緊張感や殺気、憎しみや哀しみの生と塊……。


──『殺せ!!』


と、不意に彼女の頭の中に、記憶にある声が響いた。


(あっ……!!)


思い出してはいけない。そう強く念じても、それは止まらなかった。



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