翌日も、情報不足ということで、そのままこの町に留まることになった。


朝一番でハリスからそう告げられた直後、カルロは朝食も待たずにまたどこかへふらりと出掛けてしまい、アルディスには必然的に、ブレンダとイグナスの二人体制で護衛がついている。


オリビアが朝食として作ってくれたスープを口に運びながら、アルディスは同じ部屋にいる二人に目をやった。


扉近くの壁に背中を預けるイグナスは特に感情の浮かばない表情で、しかし気は抜かずに意識をこちらに集中させている様子で、窓の近くのブレンダはアルディスに不躾な視線を向けないように配慮しつつも、やはり緊張感を漂わせながら辺りの様子を窺っている。


昨日からずっとこんな姿を見せている二人だが、もちろん疲れないわけがない。そう思うと、アルディスは急にスープへの食欲がしぼんでいく気がした。


「……二人の、朝ごはんは」


終始黙っているアルディスがいきなり声を発したことに、二人は揃って一瞬だけ驚いた表情を示す。

「……もう食べた」


先に答えたのはイグナス。


「……私も、隙を見つけて食べるようにしておりますので大丈夫です。どうかお気遣いなくそのままお食事続けて下さい」


安心させるように微笑みかけながらブレンダも言う。


アルディスは、騎士たちが夜の間も交代してとは言えこうして護衛をしてくれていることを今更ながらはっと思い出す。


「……はい……」


ありがとうございます。お世話かけます。どうかしっかり休むようにしてください。言いたい思いは渦を巻くのに、なぜか言葉には出来ない。


彼女が俯きながら、もう一口スープをすすった、その時。


「……イグナス、ブレンダ、ちょっとだけ良いかな」


ノックとほぼ同時に扉が開き、顔を出したハリスが騎士二人を呼んだ。


一行の中では最もアルディスに礼儀正しいこの人が珍しい、と二人して思った様子だったが、素直に従って扉の前に集まる。


「……一昨日、侯爵の屋敷で起こった一件、覚えているね。実はあの主犯組織の革命グループの一派が、この近くを根城にしていると情報を掴んでね」


食事中のアルディスには聞こえないように声をおさえて話すハリスだが、その言葉はしっかりと彼女の耳に届く。