和成は紗也の想いを受け入れる事にした。
 その方が紗也も喜ぶだろうし、気持ちの上では自分も嬉しい。
 なにより、このまま死んでしまっては悔いが残る。

 だが、戦で命を落とすことなく生きて戻った時、本当に後悔しないのだろうか。

 紗也の想いを受け入れる事自体には何のためらいもない。
 問題なのは紗也を助けて国を支えていく事が、自分にできるのかどうかという事。

 城の官吏ではあるものの、軍事以外で政治に直接関わった事はない。
 政治に対する素人さ加減では紗也と大して変わらない気もする。

 むしろ毎日、ちゃんと読んでいるかは疑問だが、書類に目を通している紗也の方が和成よりも詳しいのかもしれない。

 決意はしたものの、のどの奥に小骨がひっかかっているような違和感は拭えないでいた。

 ふと目を向けた中庭の桜は、いつの間にか七分咲きになっている。
 満開となったこの桜の花をもう一度見る事ができるだろうか。