咲は輝人の話をきくと、すぐに竹井遼に電話をして家まで呼び出した。


「おまえ、占いだったか催眠術だったか怪しい術が使えるんだったな。」


「咲が俺におりいって話が・・・なんて自宅に招待してくれたからよろこんでやってきたのに、いきなり怪しいって何だ?」


「十分おまえの存在そのものが怪しいから、しょうがないだろ。」


「うっ・・・俺はゲイ達者だからな。天才なのはもちろんのこと、今の高校に真面目に通っているなんて時間の無駄といってもいいほど、資格はいろいろと持っている。

そこの単細胞先生よりも上の教職をいろいろとな。」


「そうだったな。あとでもちろん俺個人の相談もおまえにしたいと思っているけど、その前に力を貸してほしい。」


「へぇ、咲にそんな目でお願いされちゃうなんて意外・・・。でもうれしいな。何でも任せて~体も任せてくれていいよ。」


「解決しだい・・・・・・・。」



「うわっ、大事なとこが無言かっ。俺にはわかるだけに痛いな。

で、雪美の深層心理をさぐればいいんだよな。
彼女を探ったところで、咲へのラブラブしか出ないと思ってたんだけど・・・過去を遡ると隠れた部分ってのはあるってことか。」


「もう、過去のことがわかるのか?君は!」


「わかったのは咲のことだけ~。きれいな目と手のぬくもりでね。」


「き、気色悪い!俺はいいから雪美をだな~」


「はいはい、じゃ、咲はコップでも口移しでもいいから雪美にこのお茶を飲ませてきて。
2分で眠ってくれて体も心も開き始めるから。それからね。」


「体もなのか・・・そのお茶、俺が使いたいな。」


「こらっ、先生から犯罪者になるんですか?」


「いや、ちょっとツッコミどころかなぁ~なんてね。」


咲はすぐに部屋を出ると台所で竹井から受け取った粉末のお茶をぬるま湯でとかしてから雪美の部屋へと入った。

そのあとを追って竹井と輝人が続いて雪美の部屋に行くと、雪美が咲の腕からベッドへと寝かされようとしていた。


「さすが俺の恋人。口移ししか頭になかったとは情熱的だねぇ。
はい、水だよ。これで口の中すすいでおかないと今度は俺が咲を奪っちゃうけど。あははは。」


「こいつら・・・!」


「いいからすぐに始めろ!」


「へいへい。じゃ、これをね・・・」


竹井は占いでよく見るオーソドックスな水晶玉を机の上にポンと置いて、覗き始めた。


「リン、リブ、ハン、ハブミ・・・」
何語なのかわからない呪文の言葉をつぶやいて、雪美の胸の上に怪しい粉を軽く塩をふるようにかけて再び水晶玉を見る。


「こいつだな・・・。雪美の心をつかんで離さないのは。」


「えっ・・・!どうして?どうしてなんだ!」


「ちなみにこの男の小さき頃の姿はこれ。」


「うぉ!こいつは・・・俺たちの敵。俺と俺の友達みんな、こいつにぶっとばされたことがある。

優しい顔してるくせに、近所の公園をかたっぱしから小さい子に解放するとかなんとかって叫んで小学生以上のやつらに怪我させまくって小遣いを泥棒されたやつも多い。」


「嘘だ、そんなこ・・・と。あ、でも・・・。そんなぁ・・・。
兄さんがそんなひどいことしてたなんて。」


「兄さんだと!じゃ、こいつって、この前ここに挨拶にきたっていうおまえの・・・。そうか、大人になっても雪美に近づいたってことか。」


「どういうことなんだ!先生?」


「だから、ああいう顔のやつを目で追っていたって話だよ。
つまり、おまえを受け入れたのも見た目あいつと似てるからだろう。」


「咲、ショックを受けてる場合じゃないよ。
君は雪美の記憶をもどしたいのか?

それともお兄さんを守るために、雪美の記憶をもどすのをやめる?」


「それは・・・だけどどうしてだ?兄さんはお店のお嬢さんと結婚を前提につきあっているはずだ。
どうして、雪美のストーカーなんてする必要がある?」


「過去に雪美はこいつの命令で動くロボット。奴隷だった。
こいつのためにいい働きをすれば、お菓子がもらえたり、抱きしめてもらえたようだな。

やってることが悪いことだと知らないまま、雪美にとって憧れの愛する王子様といったところか。」