雪美が自分の教室にもどろうとすると


「誰がセクハラ教師だってぇ?」


「てっ・・・輝じゃなくて・・・井坂先生。
もう授業が始まりますよ。」


「昼休みに1対1でお話し中はよろしくないと思うぞ。
チラと顔を見せにきてくれてもいいのに。」


「家で見れるじゃないですか。
それに・・・この校則掲示板に竹井先輩はしっかりとゲイカミングアウトって表示されてますよ。

彼の勇気をみんなが認めたから平穏な学園生活になったんじゃないですか。」


「そうだな。ここの生徒たちは厳しい校則を普通として理解できるようになってるからたいしたもんだと思ってるよ。

生徒会の伝統もあるんだろうけど・・・今の平穏はまちがいなく君の功績だな。
じゃ、あとでな。」


午後の授業が終わって、放課後は生徒会室で会議が行われた。

いつものように副会長の中井が議題と説明をする。



「もうすぐ夏休みに入りますが、毎年我が校は夏休み初日の夕方に夏祭りを開催しています。

祭りといっても学園祭のような模擬店などは扱わず、夕涼みの延長みたいなもので生徒でやるのはアトラクションだけです。

飲食店などの屋台は地元の商店会や婦人会の皆さんの協力で出してもらっています。」


「アトラクションってグランドとどこでやるんですか?」


「1階東側の教室のみだ。西側は保健室と更衣室をとっている。
で、クラス半分ずつ交代で出し物をするグループと見て回るグループ交代で楽しむやり方を過去はとってきたんですけど、それでいいかな。」


「はーい。」


「で、先日全体で楽しめるアンケートをとった結果なんですが・・・・・。

女子生徒のアンケートで選ばれた男子(先生含む)上位7名を景品にして、夕涼みデートができる権ゲットイベントをする・・・と。」


中井がそこまで読み上げると松永が声をあげた。

「誰がそんなこと言いだしたんだ?
そんなの初めての企画だよな。」


「言いだしっぺは・・・竹井・・・妹だ。」


「なるほど・・・。でも彼女は菅野の大ファンじゃなかったか?」


「菅野がつれなくしてるから、実力行使に出たと考えられるな。」


「おいおい・・・。じゃあ咲が1回デートしてやりゃいいじゃん。」


咲は仏頂面で


「特別な好意もないのに、いい加減な付き合いをするのは嫌だね。
何かとあとで厄介なことになる素だ。

それでなくても、俺はあの兄妹からジロジロみられるわ、追われてる気がするわで、気色が悪い。」


「まぁたしかにな・・・。あはは。
そういえば、浅岡はよく竹井兄としゃべってるよな。」


「ええ。竹井先輩はいろいろ知ってて、勉強になりますよ。
それに、カミングアウトされてますし、親友って言われてます。はい!」


「親友なぁ。でも、見た目だけはどっからみても・・・なぁ。
校内はいっしょにいてもいいけど、外ではやめておけよ。
親密な異性交遊に見えてしまって他校の生徒にからまれたりする原因になるからな。」


「そうなんですか。でもきっと大丈夫ですよ。
竹井先輩って柔道3段、空手5段って言ってましたから。」



「からまれる原因を作らないにこしたことはないと言っているんだ!
それに、校内とはいっても、あまり頻繁に竹井といっしょにいるといくらカミングアウトの証を貼ってあるといってもいらぬ詮索するやつが出てくるだろうからな。

よく考えて行動するように。これは君のために忠告する。」


「はぁい・・・。」