翌朝、雪美は朝食もろくにせず、登校していた。


「あれ、浅岡今日は早くないか?まあいいや。」


「松永先輩こそ、今日って風紀検査の日でしたっけ?
なんで準備しておられるんですか?」



「転入してくる生徒がいるんだよ。」


「転入生ひとりになんかものものしくないですか?
私が入学して初めての検査のときよりすごいような気がするんですが。」



「それがね、中井がその子たちを知ってて、家はそこそこの資産家らしいんだけど素行がスゴイやら乱れてる困ったヤツらだっていうんだ。

いつもの中井の大げさぶりかとも思ってたんだけど、教頭先生から連絡があってね、最初が肝心だから~とかなんとか・・・ね。

問題ある生徒だっていうのは間違いないらしくってね。」


「もしよかったら私もお手伝いしますよ。
それとも、私みたいな髪の毛だと誤解されるからダメですか・・・。」



「いや、もしもだけど・・・君と同じように理由ありで違反と間違われがちで困ってる子だったら説明しやすいから、俺の横で他の生徒のチェック表係しててくれるかな。

臨時風紀委員をお願いするよ。他の当番にも伝えるし。」


「ありがとうございます。がんばります!」


(ネット上ではちょっぴり失恋のショックだったけど、朝から松永先輩のお役にたてるなんて今日はいい日かも・・・)


多くの生徒から、今日は特別の日なのか?と訊かれることも多かったが閉門まで5分というところで、松永が警戒していた兄妹がやってきた。



「ちょっと待った!君が今日転入してきた竹井クンだね。
まだ校則に慣れないのはわかるが・・・」



「あんたも文句あるの?
べつにこの学校に入りたくて来たわけじゃないぜ。
強制的にここへ連れて来られて1回は登校しないとやめることもできないと保護者が言うもんだから、来てやっただけだ。」



「私も型にはめようなんて学校は嫌いだわ。
トップモデル志望の私が地味なカッコなんてできるわけないでしょ。」



「退学するために来たというのか?
先生の話ではうち以外の学校では君たちの受け入れなどないときいているんだけど。」


「うるせえな。学校に行くだけが人生じゃないだろ・・・。
それに俺は高校程度の学力はとっくに終えてるんだよ。

『飛び級』って言葉知らないか?
俺はアメリカで博士号もとっているんだが・・・。」



「なっ・・・。しかしここでは。」



「いいからそこをどきな。おまえらとお友達になる予定はない。」


「私だってお友達になる気はないけど、相応の身なりをしないと通しちゃいけないところなのよ。ここは!

どうしても通りたければ、襟を正しなさい!
髪の毛の長さは今日は仕方がないけど、せめてこれで後ろで束ねなさい。

モデルさんだの政治家さんだの特別っていうなら、私みたいに正規に許可証をとってから歩きなさいよ。」


雪美は松永を押しのけた竹井の前に立ちはだかって文句を言った。


「へぇ、この赤い髪の毛は許可されたものなんだな。」


「そうよ、私の髪は染めたものじゃなくてご先祖様から受け継いだものよ。
毛染めだって見る目のない学校と違って、ここは正当なものは正当だって認めてくれる学校よ。

だから風紀がきびしくてもみんな納得してるわ。」


「うんちくどうも・・・。けど、俺はそういう正当ぶったやつらは好きじゃないんでね。どけ。」



「襟を正して、髪を束ねるまで進ませない!」


「このぉ・・・任務に忠実なおこちゃまは痛い目にあわないとわかんねえんだな。」