雪美は風紀委員長 松永竜輝の肩に担がれて保健室へと移動させられた。


(な、何なの!こういうときってお姫様だっこかおんぶするんじゃ?
これじゃまるで、小麦粉を担がれてるみたいだわ。ううう)


「よっと。じゃ、手帳出して。」


「あの、さっきの廊下を走ったって偉そうに言ってた人はもしかして・・・。」


「風紀委員長の松永竜輝に向かって偉そうに命令するのはひとりしかいないっしょ。生徒会長の菅野 咲だよ。

放課後、生徒会室に咲がいると思うから受け取って帰って。
俺はクラブでいないから。」



「クラブってやっぱり柔道とか、バスケットですか?」


「あははは、よく言われるんだけどね~。華道部です。
柔道はね、1年の真ん中くらいまで習い事でやってたんだけどね、これ以上でかくなるのが嫌さにやめたんだよ。

今はね、植物と水の魅力に憑りつかれてしまって。
痛かったね・・・ごめん。

えっと・・・浅岡雪美さん・・・だね。」


「はい、ご迷惑をおかけしてすみませんでした。
あの、ほんとにほんとに赤いのは本当です。毛先だけなら、カラーをとる薬品つけても大丈夫ですから・・・あの。」


「うん、わかった。嘘はついてないと認めるよ。
でも、廊下は走らないこと。

当たったのが俺だったら足の骨を折ってたかもしれないしね。あははは。」


「す、すみません。えと、松永先輩・・・。」


「またね・・・ここには担任の先生が来るらしいから、俺は教室へ行くけど明日の朝には正門のとこにいるし、明日は怖がらないで。あはは。」


「はい、もう怖がりません。」


雪美は松永が体格が大きいだけで、じつはとても温和な人だとわかってうれしくなった。

髪の毛の色で何度も説明する必要もなくなったし、足は少し痛いけれどこの学校に入学してよかったと思った。



足をひきずって自分の教室へたどりついた雪美は、入学して会話を始めた友人たちに朝の出来事についていろいろと質問されるはめになった。


「へ~~~風紀委員長の松永先輩って優しい人だったんだ!」


「うん。髪の毛の色が天然だって届を出してたから、その確認をしようとしてただけだったのに、私が勘違いしちゃって捕まると思ったらもう足が勝手にね・・・。」


「そんなトラウマになってしまうくらい苦労してたんだ。
きれいな赤毛なのに・・・大変な思いしてたのね。」


「まぁ・・・でもこの学校ではきちんと手続きしてしまえば、先生も生徒会も認めてくれるそうなので、3年間無駄に悩まなくて済むみたい。」



「よかったね~。わざと悪びれてるわけじゃないのに、悪人のレッテル貼られるなんてつらいよ。
それで、もう無罪放免なのね。」


「それが・・・ね。」


生徒会長の言葉で有罪になったことを説明した途端、友人たちは表情がこわばった。


「そういうオチだったのね。役員っておおらかな人が話題になると、必ず厳しい人がいるって・・・ここもそうだったんだよ。」


「確かに廊下を走っちゃいけないってわかるけど、もとはと言えば風紀委員が追いかけたからだしぃ・・・。

きっとぶつかられて、痛かったりめんどくさかったりで、うさばらししたのかもね。

会長ってやっぱりストレスも多いんじゃないの。」


「話をきいてたら、クラス委員って当たりたくないよね~」


「だね~。教科の係で十分だって。」