雪美は帰宅してから、中井のことが気になっていた。


(お姉さんが死んでしまったことを毎年思い出してしまうのかな。)


「雪美、雪美ったら!」


「な、なに?ママ。」



「学校で何かあったの?もしかして咲くんとトラブルとか?」


「ううん、そうじゃないの。」


雪美は母に中井の話をした。


「その人は雪美に救ってほしかったんじゃないかな?」


「えっ、どうして?」


「なんかそんな感じがする。
だってわかってるって言ってたんでしょう。

色がどうしても思い出させてしまうんだよね。
髪の色はよくない思い出を呼び込んでしまうんでしょうけど、それだけじゃないんじゃないかしら。」


「それだけじゃない?・・・(そうだ、あとで咲にきいてみよう。)」



夕飯直前に、咲は帰宅してすぐに部屋へと入ってしまった。
雪美は夕飯後も、入浴後も咲と2人になる機会を狙ったつもりだったが、さっさと咲は部屋へと入ってしまった。


(明らかに、私に何か聞かれるのが嫌なんだわ!)



翌朝も咲の姿が見えなかったため、雪美はいつものように登校したのだが、正門を入ったところで、中井に声をかけられた。



「おはよう・・・。昨日はごめん。」


「いえ、もういいですから。」


「髪の毛のせいじゃないんだ・・・。君にあたってしまったのは。」


「えっ?」


「髪を染めてた連中は絶対許せないんだけど、俺に何も言ってくれず、ひとりで逝ってしまった姉が・・・君に似ててさ。

自分は事故の被害者なのに、醜くなってしまって家族に迷惑かけてるって勝手に思いこんで・・・思いつめて。

挙句の果てにはぜんぜんキャラ違いの加害者のあいつらみたいな赤い髪に染めてけばい化粧して手首切ってた。
ずっとそれが頭から消えなくてな。ごめん、朝からヘビーな話して。」



「いえ、思い出させてすみません。
そういうことなら、私・・・許可をもらってもうちょっと赤が消える毛染めしてもかまいません。」


「いや、いいんだ。
俺のことで校則違反させるわけにはいかない。
その髪がありのままの君の証なんだから、堂々としていればいいよ。

俺が乗り越えなきゃいけない時が来たんだよ。
そう、咲にも言われた。
すぐには笑顔を向けてあげられないかもしれないけど、闘ってるんだなって思って許してくれる?」


「はいっ。お安い御用です。
でも、早く笑顔を待ってます。
でないと、特別に私が嫌われてるんだと思っちゃいますから。」


「特別に嫌う?」


「中井先輩は私以外の人には笑顔で接するじゃないですか。
だから私には特別に嫌がられる原因があるんだって、悩みました。」


「ほんとにごめん!
まぁ特別っていうのは当たってるのかもしれないかな。
そうやって、相手より自分がいたらないって思うとこが姉さんに似てるから。
今度の委員会のあと時間ある?
お詫びに、何かおごるよ。っていっても甘党からーめんくらいだけどな。」


「いいんですか?らーめんたかっちゃいますよ。」


「OK!じゃ、またね。」


中井は雪美には笑顔になりきれないひきつった表情を向けて手をふっていたが雪美は母の言葉が理解できてうれしくなった。


(私に救いを求めてた・・・私は救える手伝いができる・・・。
お母さんのカン・・・当たってたよ。)