話しかけても一言も返事を返してくれないので、仕方なく黙っていると、いつのまにか壁際に追い詰められて。

片手で私の手をつかんだまま、もう片方の手を私の頭の横に置かれて逃げ場がなくなる。


まさか殴る気じゃ......。
さすがにそんなことはしないと思うけど、ずっと無言なので何をされるのか分からない。


殴らないで、と言葉を発しようとした瞬間、すぐにそれは叶わないことになった。

私の唇は、彼のそれにふさがれていたから。


何が起こっているのか訳も分からず、ただされるがままになっていると、だんだん立っているのも辛くなってきた。

体に力も入らないし、上手く息もできない。


抵抗することも、キスに応えることもできず、私にできることといったら、エリックさんにしがみついて自分の体を支えることだけ。


一瞬かも、長い間だったかも分からないキスが終わり、エリックさんはいったん体を離した後、もう一度私の体を抱き寄せて。



「俺がほしいなら全力で奪りにこいよ」



耳元で謎の言葉を言い残して、さっさと部屋から一人で出ていってしまった。