どうすればいいのか分からなくて一人で固まっていたら、ちょうど洞窟の外からスタッフの話し声が聞こえてきて。

先にエリックさんがパッと手を離して、私も慌てて距離をとる。


軽くメイクを直してもらったあとに指示された恋愛シチュエーションは、指定されたセリフで告白するという簡単なものだったけど。

エリックさんが問題なくこなしたのに対し。

パニックになっていたのもあったし、中国語の発音もしっかりできない私の演技は、とてもとても世間には披露できないグダグダなものになってしまった。

そこが告白前の初々しさがあっていいとすぐにOKがもらえたのは、不幸中の幸い。


キス、されるのかと思った。
そんなわけないのに......。

仕事で仕方なく以外は、絶対に嫌だって上海の時も拒否されたし。


世間から隔離された状況で、ムラムラして魔がさしたとか?
でも、エリックさんならその気になれば、他の人誘えるだろう。


それにいくら女遊びが激しくても、メンバーの彼女なんて大きなトラブルになりそうな女に手を出すほど、軽はずみな人じゃない。
......はずだけど。


きっと私のメイクが崩れてたのがみっともなくて、じっと見てただけ。
それ以外の意味なんて、ないよね?


私があれこれ悩んでたのが嘘みたいに、エリックさんは、次に会った時はすでにいつも通りに接してきた。
それはもう腹立たしいくらいに。


結局洞窟でのことが何だったのか分からないまま、私たちの無人島撮影は終わった。