「難波秀太…すいません、聞いたことないですね。美波さんの知り合いですか?」

「うん、中学のときの友達。」

知らないか…


「何で俺に聞いたんですか?」

「あ…」

もし難波くんが希龍くんと関わってたとしても、春斗と関わってるかどうかは分からない。

春斗の様子だと、ほんとに知らないみたいだし。関係なかったんだ。


「…聞いてみただけ。」

こんなことで騙されるほどバカな人じゃないって分かってるけど、それでも春斗は…

「そうですか。」

何も気づいていないフリをして、騙されてくれる。優しいから、深く聞いてこない。


「困ってるなら言ってくださいね、俺いつでも力になりますから。」

「…うん、ありがと」

悩んでることにも一番最初に気づいてくれる。春斗がいなきゃ、きっともっと悩んでたんだろうな。


「春斗こそ、悩んでるならいつでも言ってね。」

そう言うと春斗はニコッと笑って「一番に美波さんに相談します」と言った。

ほんとに弟みたい。


「行きましょうか。」

「うん、そうだね。」

春斗みたいな弟がいたら、きっと毎日家に帰っても寂しい思いなんてしなかったんだろうな、なんて考えてた。