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"…神岡希龍って知ってる?"


どうしてあんなことを聞いたんだろう。

なんで難波くんが希龍くんのことを知ってるんだろう。接点はないはずなのに。


そう聞かれたとき、思い付く言葉はなかった。だから何も言えずにただ、難波くんを見つめることしかできなかった。


"ごめん急に。やっぱり何でもない、さっき言ったこと忘れて。"


忘れられるわけがない。

あれからずっとそのことばかり考えていたけど、直接聞く勇気もメールをする勇気もない。


「美波、明日も来る?」

「うん、来るよ。」

「じゃあ春斗に迎えに行かせるわ。」


「じゃあな」と手を振る葉太に手を振り返して、ふと思った。

どうして春斗が迎えに来るの?

狂羅は完全に潰れてしまって、あたしを追う人間はいないのに。

守ってもらう必要もないのになぁ。