「殴っちまったなー…」

自分の手を見つめて自傷気味に笑う葉太はやっぱりどこか悲しそうだった。


「つーかあいつ、嘘下手すぎ。」

「え?」

「ほんと、世話が焼けるトップだ。」


理由を無理矢理問いただすと壊れてしまいそうな気がして、何も聞けなかった。

時折見せた悲しそうな目が、助けてくれと言っているようで困惑した。

葉太もそれを、見抜いてた。

当たり前のことなのかもしれないけど、涙が出そうになった。


「美波、明日からもここに来いよ。」

「え?」

「あいつが何してんのか、どこに居んのか、意地でも調べあげてやる。」

「でもさっき"バイバイ"って…」


きっとあれは、今日の別れじゃない。

もうこれから会わないっていう、最後の別れの挨拶だった。

だから悲しかった。