その狂羅が潰れた。

あたしを追う人間、狙う人間がいなくなった。

……守ってもらう必要も、なくなった。


毎日送り迎えをしてくれてた春斗は動けない。

芽衣にも迷惑をかけてる。

ここに連れてきてくれた希龍くんも、もうここにはいない。ここには帰ってこない。

それが何を意味するのか、もう分かってた。


新しい生活が始まる。

あたしにとっても、みんなにとっても。


「…大丈夫だよ、きっと帰ってくるから…!」

目に涙を溜めて言う。

こんな顔をさせてるのは、いつもあたし。


「うん…、そうだね」

もとに戻るだけ。

みんなと出会う前のあたしに戻るだけ。

あたしはただの女子高生。


でもみんなは違う。

"龍泉"っていう大きなグループに関わってる。それを支える人間ばかり。


誰も言わないだけ。

でもあたしは気づいてる。


…あたしがここにいる理由がなくなった。

ただそれだけ。