切り分けられたケーキが、いつまでも冷蔵庫の中からなくならない。

それは、彼がずっとここに帰ってきていないことを示していた。


春斗の退院祝いの日。

あの日から希龍くんは、あたしの前に姿を見せない。それどころか、葉太ですら何をしてるのか分からないらしい。


向こうからの連絡は全くないし。

こっちからしても繋がらない。

どこにいるのか分からない状態だった。


「美波、今日も…」

落ち込んだ芽衣の声に、ズキンと胸が痛む。

あたしがそうさせてるのか。


「そっか…、何してるんだろうね…」


浮かれていた。

狂羅のことは全て終わったし、春斗だって目を覚まして、怪我も段々治ってきてる。

全てが上手くいってるから、これから先もきっとこうやって毎日が進んでいくんだと思っていた。

そんな考えは甘かった。

気まぐれな彼だから、きっと何日かすればもとの希龍くんに戻るだろうと思っていた。


「ごめんね…力になれなくて…」

「芽衣のせいじゃないからっ」