「希龍がね、帰ってきたよ」

あたしの手を引いて、笑顔で言う。

「…うんっ」

あれから希龍くんには会ってない。

やっと熱が下がったばかりだから、会えるような状態でもなかった。


…だからあのとき言ったことの返事も、まだ聞けないまま。

ほんとに言ったのかも怪しい。

夢だと言われればそんな気もするし、ちゃんと希龍くんに向かって言ったような気もするし…


「葉太も春斗にも会いに行ったみたいだよ」

「そっか…」

目に浮かぶ。

希龍くんを見て騒ぐ春斗と、春斗を落ち着かせようとする葉太の姿が。


「ありがとね、美波。」

「え…?」

「美波のおかげだよ」