頭がクラクラした。

辛そうな顔をしたら、きっと難波くんは心配するからそんな顔を見せらせない。

立っていられないほどじゃない。

だけど顔を見られたらバレるような気がして、難波くんと目を合わせられなかった。


「503号室…」

難波くんが教えてくれた病室はまだ覚えてた。

【土屋由佳】

彼女の名前。


「由佳、入るよ。」

「あ、秀太。どうしたの……」

難波くんの後ろにいたあたしを見て、笑顔だった土屋由佳の表情が変わっていく。


「会ったの。」

難波くんを睨み付ける彼女の目には、怒りだけじゃなく、悲しみも含まれてるように見えた。